400人が踊り続けて死亡「踊り病」の謎、現代でも再発する可能性
「踊りながら死んでいく」という、まるでホラー映画のような出来事が、実際に500年前のヨーロッパで起きていた。
1518年7月、フランスとドイツの国境に位置するストラスブールで、トロフィアという女性が突然、無言で踊り始めた。音楽も理由もないのに、彼女はただひたすら体を動かし続けたという。
夜間運転用メガネが今ドライバーに急増中ナイトライダー 最初は夫も含めて周囲はただ見物していたが、すぐに観客たちも同じ衝動に取り憑かれた。数時間後には街中が狂ったようなダンスに覆われ、手足を激しく振り回す人々が汗だくで踊り続けた。疲れ果てて眠ると、起きればまた踊り出すという異常な状態が続いた。
市の当局者たちは緊急会議を開き、驚くべき対策を打ち出した。なんと「踊りたいなら踊らせてやれ」と、専門のダンサーを呼んで特別なダンスイベントを開催したのだ。数百枚のチケットが売られたという記録もある。
当然ながら効果はなく、感染者は増え続けた。結局、この「踊り病」は9月まで約2ヶ月間続き、最終的に最大400人が死亡したとされる。1日あたり15人もの死者が出た日もあったという。死因は疲労と極度の筋肉のけいれんだった。
原因については今も論争が続いている。有力な説の一つは、ライ麦に生える麦角菌(エルゴット)による集団中毒だ。この菌は幻覚やけいれんを引き起こすことで知られ、ストラスブール周辺では現代でも麦角菌の発生が確認されている。
もう一つの説は、アメリカの医学史家ジョン・ウォーラー氏が提唱する「集団ヒステリー」説。当時はペストの恐怖など極度のストレスが社会に蔓延しており、それが集団心理的な異常行動を引き起こしたというものだ。
では、現代でも同じようなことが起きるのか?答えは「イエス」だ。実際、2011年から2012年にかけてニューヨーク州ルロイで、10代の少女20人が不随意の運動や発声障害を発症する事件が発生。専門家はこれを1518年の「踊り病」と比較している。
イギリスの農業園芸開発委員会(AHDB)の上級穀物品質科学者クリスティーナ・グレンツ氏は「現在は麦角菌についての知識が格段に増え、管理能力も向上している」と語る。しかし、完全なリスク除去は難しく、生産システムへの慎重な対策の統合が必要だと指摘する。
原因が集団ヒステリーであれ、食中毒であれ、「踊り病」は決して過去の話ではない。現代社会でもストレスや食の安全問題が引き金となって、いつ再発してもおかしくないのだ。
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